『ドラゴン堀江』焦らないホリエモン、心折れる生徒たち|熊本の塾長の見解(続)

こんにちは。熊本の勉強戦略コンサルティング指導、ブレイクスルー・アカデミー代表の安東正治です。

 

 

前回の記事からさらに展開が進み、今の時点で『ドラゴン堀江』は第4話に入りました。すでにご覧になられた方はご存知かと思いますが、なんと本企画の企画者であるホリエモンこと堀江貴文さん自身のセンター3教科の点数が壊滅的だったという事態になっています。この事態を見たネットニュースの中には、早速ホリエモン叩きを始めて「口だけ堀江」といった中傷を行うものまであります。

 

 

実際、次回予告では、勉強が分からなすぎて涙する生徒や、こうやって頑張っていることに価値を見出せなくなってしまう生徒さんまで現れ、「どうなる!?ドラゴン堀江!」と煽るような展開になっているようです。

 

 

ただ、ここまでの展開はおそらく堀江さんの予想の範囲内であり、かつ数学の16点/200点についても全く堀江さん自身焦る様子がありません。今回は前回の『ドラゴン堀江』の徹底解剖記事の続編として、今の状況への考察と、熊本の個別指導型学習塾ブレイクスルー・アカデミーの塾長として「自分ならどうするか」という代案まで含めて記事に残してみようと思います。

 

 

センター試験壊滅でも堀江さんが焦らない理由

まず今回最もフォーカスされている点としては、堀江さんのセンター数学の点数がⅠAとⅡBのトータル200点満点で16点だったということ。それもⅡBに至っては0点です。問題を見た瞬間に投げ出して、全く回答せずの白紙提出による0点。これにはサポーターとして入っている東大出身講師も「やばいですね」「このままじゃセンター間に合いませんね」「メンバーの中で一番可能性が低い」というコメント。

 

 

勿論、東大出身講師のコメントは展開を盛り上げるための台本通りのセリフだとは思います。『ドラゴン堀江』の企画全般を通して、今だにまともな発言をしていない2名のサポーターですが、これが台本でなければ本気で残念なことになってしまいます。番組的に盛り上げ役を買って抜擢されたはずですので、イエスマンになっていることも発言が限られていることも了承済みのはずです。少なくても私はそう信じたい。

 

 

そんなやばい状況にあるはずの当の本人は、まるで焦る様子がありません。内心焦っているけど強がって見せていないだけ、という見方もできますが、おそらく本当に焦っていないのだと推察します。なぜか。本当に焦る必要がないと思っているからです。

 

 

そもそも、今の時点でセンター形式の問題で何点取れるかということは、全く気にする必要がありません。今の点数がどんなに壊滅であっても、逆にどんなに完璧に近い状態であっても、本番の点数が全ての鍵を握っているからです。当塾でも、生徒さん方によく言うのは「今の成績が0点だろうが満点だろうが関係ない。本番の結果が全てだよ」ということ。今すべきことは点数を取ることではないのです。

 

 

もっと大事なことは、今の自分が何をすべきかを明確にすること。その点で言えば、堀江さんがⅡBの回答を放棄した理由も頷けます。見た瞬間に「あ、今の俺が覚えている内容じゃまともな点数は取れない」と悟ったのです。その状況では、どんなに気持ち的に頑張ったところで、良い結果が出るわけがありません。物理的に無理なのです。だから頑張る前に頑張ることを放棄した。

 

 

この見極めの良さは、見る人が見れば「受験生としてあるまじき行為」と映るかも知れませんが、実際にはこの判断が大切です。なぜなら、準備不十分な上に、結果が出ないと分かった状態で問題を解くことの方が、時間が勿体無いから。その時間を「忘れたことを思い出すこと」に使った方がはるかに建設的です。だから堀江さんはこのセンター数学の結果を目の当たりにした後、サポーターの講師に解説授業を申し出たわけです。自分に足りないものを埋めるために。

 

 

心折れる生徒たちには何が起きているのか

しかし一方で、勉強とは何かが理解できておらず、メンタルコントロールの術も知らない生徒さんたちは、目の前の勉強の難しさと、問題を解いてみての手ごたえや実際の点数から、徐々に現実の厳しさに押し潰されそうになっています。

 

 

勉強を始める前はまだ良かったのです。「頑張ったら私も東大に合格できるかも知れない」「この企画で東大に受かれば人生変わるかも知れない」そういった希望しかなかったからです。ただ、この時点ではまだイメージ先行で、感情優位になっています。

 

 

感情優位になっているために、次に確実にやってくる闇に完全に飲まれてしまいました。希望的観測(イメージ)と現実(リアル)との大きなギャップです。「思ったよりも結果が出ない」という、成長カーブに乗る前の長い暗闇のトンネル期に、完全にメンタルを持って行かれて一気に不安に飲まれてしまったわけです。

 

 

これもまたおそらくですが、こういった感情の揺らぎも想定の範囲内であると思われます。企画の中で、生徒さんたちが途中で心折れる時が来るだろうという予測は、ほぼ確実にあったはずです。そして、この場面で見せ場を作りましょう、という算段のはずなのです。ですから番組的にはここで「どうなる!?ドラゴン堀江のメンバー!」と煽っておいて、それを乗り越えさせてドラマ的展開を作るというのが狙いだと思います。そして受験に役立つアドバイスを連発させて「ここでホリエモンから驚きの金言が連発!」とやる。

 

 

実はこういった企画、というか、生徒さんの成績を比較的短期間に劇的にアップさせていこうと導く場合に最も大切になってくるのが「モチベーション・コントロール」「メンタル・コントロール」なのです。

 

 

成績の良し悪しや受験の合否はコレで決まる!

成績がちゃんと上がるのか、志望校にちゃんと合格するのか。これらに最も大切な要素は頭の良さでも勉強時間の長さでもありません。メンタルをコントロールし、モチベーションをコントロールすることです。

 

 

「モチベーションとは何か」については別の記事で詳細をご説明してありますので、そちらをご覧下さい。また、メンタルについてはこちらで解説しておりますのでご参考下さいませ。ただ、少しだけここでお話しするとすれば、モチベーションとは勉強へのある種の意欲のことであり、メンタルとは物事の捉え方であるということです。

 

 

突き詰めて考えてみれば、勉強とは誰にでもできる作業です。与えられたものを覚えさえすれば良いわけですから、そこに能力は本来関係なく(というより、その作業を滞りなく済ませるだけの能力という意味では、誰もが平等に有しているので、それについて議論する必要がなく)、やるかやらないかなのです。しかし人間というのは進化し過ぎて余計なことまで考えられるようになってしまったために、この「やるか」「やらないか」の間にグレーゾーンを作れるようになりました。要するに「やろうかどうしようか悩む」「やりたくないけどやらないといけない」という、感情と思考がバラバラのベクトルに向いている状態を維持できるようになってしまったのです。

 

 

すると、やるんならやればいいのになんだかんだ言ってやらなかったり、やらなきゃいいのに中途半端にやって結果を出せずに悩んだりという、自ら生み出した狭間で苦しむことになります。これがペースを狂わせるのです。これが大なり小なり個々人の内に生じるために、それぞれの成績のばらつきとなって現れるというわけです。

 

 

この

 

 

① やるのかやらないのかハッキリすること

② やるならやるで、どうやるかを明確にすること

③ やらないならやらないで、その代替案を考えること

 

 

という、①②もしくは①③のいずれかに振り切れば何かしらの結果に繋がっていくのですが、①の時点で判断できず、②にも③にも思考が行かないので、思考を前に進められず何の結論も出せない”闇”に迷い込みます。この時にメンタルをコントロールして状況を理解した上で、モチベーションをコントロールして継続した努力を実現するという展開が必要になるわけです。

 

 

つまり『ドラゴン堀江』の企画で生徒さんたちを半年間で東大合格させようと思ったら、英数国社理の勉強法もさることながら、メンタルのコントロール方法を教えてモチベーション・コントロールを施してあげなければならないのです。

 

 

この企画、熊本の塾長ならどうするか

正直に言えば、ここまでやる気があって覚悟を決めてくれた生徒さんたちを一矢報いさせることもできなければ、『ドラゴン堀江』は企画として最低だと言わざると得ません。どういう意味で最低か。それは生徒さん方にあまりに失礼で無責任だということです。焚きつけるだけ焚き付けておいて、番組的に面白かったし視聴者数も稼げたから良かったよね、で終わる企画だとしたら、あまりに身勝手な構成だと感じるからです。

 

 

私がもし指導者側として入れるなら、まずはいつも生徒さん方に話すことを最初に伝えます。それは「最初の3ヶ月はマジでキツイよ」ということ。この3ヶ月は、頑張ってもすぐに結果が目に見えて出てこない可能性が非常に高い時期だからです。

 

 

頑張ったら頑張った分だけすぐに結果に出て欲しいと思うのが当然です。しかし勉強という分野では、3ヶ月から半年は成績が目に見えて上がって来ないことが普通にあり得ます。成長カーブは指数関数的なカーブを描くので、最初のうちは上昇率が小さいのです。

 

 

ですから、この最初の3ヶ月はメンタルコントロールをベースに置いて、勉強とは何かという根本的なことを概念として教えながら、英数国社理の勉強に取り組んでもらいます。こちらの2つのコースをバランスさせて提供する形です。

 

 

例えば具体的には、「この3ヶ月はバンバン間違えて構わない。むしろ間違えることが大事なこと」という教え方をします。勉強の本質は「自分の理解できていないことを理解すること」なので、自分が何をまだ理解できていないのかを知る機会が、最初の段階には必然的に頻発するからです。

 

 

必然的に間違えるという経験を山ほど迎えることになるわけですが、大抵の場合は「間違えるのは良くないこと」「間違えたら凹む」というメンタルなので、放っておけば間違えるたびにダメージを受けます。それを事前に防ぐわけです。

 

 

間違えた時に、その間違えた箇所を確実に復習して埋めていく。これをひたすら繰り返すのが勉強の第一段階になるので、その期間のモチベーションコントロールを意識して指導して行きます。

 

 

分からない問題は、理想を言うなら自分で調べて解決していく方が良いのですが、半年間でセンターと東大入試対策をしないといけない都合上、分からない問題で立ち止まる時間をなくしていきたいので、分からないものは付箋を貼ってどんどん飛ばし、ある程度分からないことが溜まってきた段階で個別に時間を取って質問対応に当たります。これが2日に1度個別の消化タイムを取れるようなペースだと理想です。

 

 

まずは3ヶ月の間に、実践を交えて勉強の取り組み方を身に付けて貰えれば、次に受験勉強の効率化の話を交えた過去問演習期を想定することができるようになります。これは生徒さんの習得状況を見て時期を選んで移行させるべきことです。

 

 

教科指導でいけば、私ならセンター試験のポイント授業、東大対策のポイント授業をして、生徒さん自身が方向性が見やすくなるようにするでしょう。どこに視点をおいて対策を進めていけばいいのかが見えた方が、モチベーションは維持しやすいからです。そして各教科の勉強法も教えて、その通りに進めてもらう。ちなみに私も、東大生たちと同じく、おそらく『ほり単』は使わないでしょう(苦笑)あの制約は結構キツイと思います。堀江さん、すいません。

 

 

まとめ

当塾のスタンスが生徒さん一人ひとりへのコンサルティングであり、教科指導よりもメンタルコントロール、モチベーションコントロールを優先するがゆえに捉えることのできた『ドラゴン堀江』の全貌を、お伝えしました。私だったらこうするだろうな、という見解も併せて読んでいただきましたが、やはり勉強で結果を出すために重要なのは「勉強を理解し、継続した努力を行うこと」だと思います。

 

 

その点、堀江さんはやはり教育者ではないので、堀江さんが直接教科指導に当たっている時点で結果は期待できないだろうなと思います。ただ、前回の記事でお話ししたように、これは番組の企画としては当たったのでしょう。現に私もこうして乗っかっています。

 

 

堀江さんは教育者ではない、というのは堀江さんが悪いということではなく、役割の問題です。堀江さんは教祖みたいな役回りが一番機能する方なので、単独で活動し、多動力で目立っていることで勝手に周囲が目指してついてきてしまうという図式の方がよっぽど機能する方かと思います。直接指導するよりも、指導は弟子に任せて、偶像化されている方が生徒にとっては良いのではないでしょうか。方法論はむしろサポーターの2人に任せてしまった方が良いでしょう。役割分担がちょっと上手くいっていないのかなと。

 

 

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