二月の勝者を観て抱く違和感と、学習塾システムのリセットへの目論み|熊本県の学習塾ブレイクスルー・アカデミー

こんにちは。熊本の教育&勉強攻略アドバイザー、ブレイクスルー・アカデミー代表の安東正治です。

 

 

遅ればせながら、最近流行りの『二月の勝者』のコミックを少し拝見しました。ほんの一部しか読みませんでしたが、中学受験リアルというか、中学受験に際し確かに見受けられるであろうドラマチックな部分を抜粋して繋げた、受験版ダーク金八みたいな印象を受けました。すみません、全部を読んだわけではありませんが、これ以上読む必要がないなと思って、今回1度だけこちらの本に触れてみたいと思います。触れるのは、私が個人的に抱いた違和感です。

 

 

それから、熊本県の学習塾ブレイクスルー・アカデミーが今密かに抱いている目論見というか野望について少し暴露します。これも二月の勝者を観て感じたことであり、やっぱり自分の生きる道はそっちかな?と思ったものですので、関連のある形でちょっと共有してみたいと思います。

 

 

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『二月の勝者』と比べる私の中学受験のリアル

今回私がチラ見したのは『二月の勝者』の4巻と5巻でした。中学受験に狂う親とその子供との葛藤であったり、生徒に対してあまりに無慈悲な主人公・黒木蔵人の暴言や過去の悪行(?)など、学習塾を取り巻くあらゆる人間ドラマが繰り広げられていました。

 

 

実は私も中学受験を経験しています。父親が転勤族だった関係で日本全国動き回っていた私は、小学生の2年生〜5年生を東京で過ごしました。姉も早くから塾に通っていたので、その流れで小学3年生から四谷大塚に通っていた私は、自然と、その志望校が御三家に設定されていました。これは私の意思ではありません。関東での中学受験は大抵は志望校は決まっているのです。そして、そこに合格するためにひたすら勉強を頑張る、みたいなノリです。この漫画にもあるように、効率的に問題を解くために膨大な量の公式やら決まり事やらを覚えさせられます。それをさせるのが学習塾であり、それをするのが中学受験である、という親たちの確信でこの中学受験の世界の8割は成り立っているということです。「8割」と言ったのは、残りの2割の勉強のルールを知っている人たちにとっては、戦っている土俵がまるで異なることを意味します。

 

 

さて、あの漫画を読んで思ったのは、確かにちょっとは自分の中学受験時代と重なる部分はあるとは言え、ああいう必死さはなかったなということ。これは個人的なものです。当時の私は少なくても、目の前の勉強を楽しんでいました。これは他のみんなもやっているから、その安心感もあったのでしょう。日常会話に勉強の話が自然と溶け込んでいた環境なので、特別感もなく取り組めたのが大きかったと、今では思います。そして競争自体も楽しかった。これは講師やチューターの方々の環境作りの賜物かも知れませんが、良きライバルに囲まれて純粋に競争に勝つための手段としての勉強を受け入れられていた、ということなのだと思います。

 

 

それから、私の親も多少はそうであったように、やはり親も必死になる。同じ中学受験というフィールドで競争している以上、自分の子供と他人の子供を比較せざるを得なくなりますし、合否はそのまま親同士の関係にも影響を及ぼします。正確には親の感情に、です。中学受験に真剣に関わろうとすればするほど、それは子供だけの問題ではなくなるのです。勉強しない子供にイライラを募らせる親も少なくないでしょう。他人と自分の子を比較してしまう意識があると、ついそれが口をついて子供に向けられてしまう。愛情という言葉で中学受験への叱咤激励の感情をカモフラージュする。中には、子供本人はやりたくないと言っているのに「お前のためだ」と強制する親もいるでしょう。それが間違っているということではなく、中学受験をはじめとした勉強全体を見たときに、そういうケースも少なからず見かけられるということです。

 

 

二月の勝者に見るこの中学受験は教育的ではない!?

と同時に、やっぱりここで行われているのは教育ではないよなという感じはしました。中学受験に限らず、同じ様相を帯びているのなら、受験全体がやはり教育的ではないということです。するともっと引いて考えるならば、受験制度も学校の在り方も学習塾の存在の仕方も、その関係性で築かれる勉強ワールドの全てが、今全く教育的ではないよな、という話になります。「教育的ではない」というのは、ここでは「そこに巻き込まれる子どもたちの将来のためには必ずしもプラスになっているとは言い難いよな」という意味です。これは多くの方が心のどこかでお思いになられていることと同じ意見かと思います。

 

 

それこそ、この漫画の中ではある時期を過ぎると、学習塾の環境が教育的であることを放棄して支配的になります。私語厳禁、飲食も水とお茶以外厳禁、一度自習を始めたら決まった時間までは終えてはならないといったような状況下で、吐くまで勉強したり、トイレも漏れるまで行けず、鼻血が出るまでやり続けて、、、。こういう場面は流石に実際には見たことはありませんが、もし本当にリアルであり、実際にこんな勉強がまかり通っている現実があるなら、それは拷問以外の何物でもない。絶対教育ではないです。確かに「道徳」という科目はないと言い切るような状態です。でも勉強はそんな風にやるものじゃないです(汗)でもむしろこれが確かに中学受験のイメージ。確実に時代錯誤であり、誤解に次ぐ誤解で築かれた壮大な思い込みの砂城ですが、おそらく程度の差こそあれ、8割ほどの人がこんなやり方で受験を乗り越えようとしているのです。そして、こういう感覚のままでいると、勉強とはこういうものであるという思い込みを強化して成長することになります。

 

 

それでも中学受験に価値を見出す方にとっては子供の将来に直接的に関わる大問題です。これもまた、私の実体験も含めて、間違いのないことだと思います。中学受験の合否は人生に多大な影響を与える。だから必死になることを自然だと思えてしまう。必死になる自分を正当化できてしまう。そして達成感すら抱けてしまう。

 

 

ただ私は、やっぱりこの誤解を解くための努力をしたい。そう思ってしまいます。

 

 

熊本の学習塾塾長が考える「学習塾システムのリセット」

私は学習塾を運営してはいますが、それでいてずっと抱いている目論みがあります。それは「世界から学習塾がなくなること」です。いや、正確に言えば「学習塾が必要とされなくなり、その形を変えること」ということになります。

 

 

学習塾は、本来必要ないものです。寺子屋を一掃してまで築き上げた学校システムは、本来それ単独で子供たちの教育機関でなければならないものでした。学校で学び、鍛えられ、富国強兵の礎ならんとする若き人材を輩出するのが学校システムの目的です。だからそこでもう勉強的には完結していないと、本当はおかしい。しかし現実はそうはならなかった。生徒間で習得のばらつきが生じ、それが学校だけではフォローしきれなかったからです。そこに補完的な機関として学習塾が生まれました。

 

 

すると今度は、学校と学習塾の役割分担が狂い始めました。本来は補完的な役割だったはずの学習塾が主役の座を奪いにきたのです。より子供たちの成績アップに貢献できたと感じさせられた塾が信用を得られるようになると、各社はこぞって「合格者」を量産すべく彼らを鍛える仕組みを作り始めました。学校で物足りなかった子供たちが鍛えられて、さらに、彼らのようになりたいと思う子供たちも預けられるようになっていったのです。

 

 

残念ながら、学習塾システムというのは本来、学校では物足りない子供たちが通う場所でした。にも関わらず、成績が芳しくない子供たちまでが通うようになり、成績を上げるためには学習塾、合格するには学習塾という慣習が次第に生まれていきました。そして最終的には、学習塾に通うのが当たり前になっていった。

 

 

先ほどの計算で行くなら、勉強について十分な理解をしている2割の生徒さんのために学習塾があるはずでした。そこに残りの8割の生徒さんの中からも塾に行きたいと思う生徒さんが流れていきました。その結果この狭い日本の国土にコンビニほどの学習塾が溢れてしまう原因になったのですが、その結果学習塾産業が潤うばかりで、結局学校で成績が芳しくない子供たちのほとんどは、学習塾にお金を払うだけで成績自体は現状維持という状態になった。「行かせていなかったら、もっと悲惨な状態になっていた」と信じながら。。。

 

 

しかし本当にそうでしょうか。学習塾は本当にそんな万能な環境なのでしょうか。一体誰が「学習塾に通い続けないと成績を上げることができない」なんて最初に言い出したのでしょうか。というか、そんな風に何かに頼り続けないと成績を維持できないような勉強のやり方を続けることが、どれほど将来のためになると言うのでしょうか。与えられたものをひたすら消化していく作業のような勉強をたくさんするだけで、将来必要なスキルが習得できるとは、私には全く思えないのです。むしろ学習塾にずっと通い続けるという前提で物事を考えることが危険であるとさえ思えてしまう。だから私は「学習塾なんて今ほど数は要らないだろう」と考えているわけです。

 

 

私がしたいのは「3ヶ月で100点伸ばす」「1年で偏差値を30上げる」といったことが、頭の良さではなく単なるスキルであることを分かっていただきたいということ。頑張らなくても欲しい結果を引き寄せられるっていうのは、頭がいい子たちだけの専売特許でもなんでもない。誰もが習得できるスキルであって、学習塾なんてなくても、勉強の正体を知り、そのルールを明確に理解すれば、自分で勉強できてしまうじゃないかということです。そのための自習室くらいはあって欲しいですが、もう学校とは別のテキストを買って、学校とは別に授業を受けて、宿題をやって、なんてしなくても、欲しい成績を出すことができると分かって欲しい。必要なら市販の問題集や参考書が星の数ほどあり、動画コンテンツも溢れるほどある。もうそういう勉強にお金を使う時代ではなくなるのです。

 

 

自分がいるこの学習塾業界が消滅してしまうような提案、目論み、野望ではあるけれど、それが起こるべきことなら、私はそれを自分の手で起こしたいと思ってしまう。実際、学習塾業界がもらっているお金、学習塾に保護者の皆さんが払っているお金というのは、子供たちの結果や成長に必ずしも貢献していないのです。それを「教育費」と呼ぶから必要そうに聞こえますが、私からすれば言葉のマジックに過ぎない。むしろお子さまが好きな服やゲームや体験にお金を使って上げた方が、彼らの人生はより有意義になります。自分で勉強できるスキルさえ身に付ければ、子供たち自身のためになるお金に回せるのです。その方が絶対人生上のパフォーマンスは上がります。人生豊かになり、もっと学びたいと思えてくる。

 

 

。。。と、気付いたらこんなに長く(汗)すみません、当初考えていたよりも語ってしまいました。続きはまた別の機会にお話ししましょう^ ^

 

 

 

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