特色化選抜、総合型選抜(旧AO入試)のリスク、分かってますか?入試制度改革を考える|熊本の学習塾ブレイクスルー・アカデミー
こんにちは。熊本の教育&勉強攻略アドバイザー、ブレイクスルー・アカデミー代表の安東正治です。
最近やけにもてはやされている特色化選抜、そして総合型選抜という入試制度。2023年度の入試では初めて、様々な観点から学生を選抜する総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜といった、いわゆる「年内入試」で入学する大学生が半数を超えました。
これは本当に良いことなのでしょうか?という、これは問題提起です。なぜなら、その一方で中学入試が過熱しているからです。この両極端なことがなぜ起きているのかを考えないと、
「一般選抜を受けずとも年内に受験が終われる素晴らしい制度だ〜」
「個性を活かせて、勉強が苦手な自分にも開かれた、総合的に自分をみてもらえる素晴らしい入試制度改革ではないか〜」
といった”ゆとり教育”時代の再来になってしまうからです。つまり、分かっている人は得をするのだけれど、表面的な理解しかできずに安易に飛びついてしまうと、その罠にハマってしまうということです。教育格差をオブラートに包みかねない危険な香りのする今の入試制度改革に、少し疑念を挟みたいと思います。
総合型選抜ってそもそも何?学力は要らない!?
そもそも総合型選抜とは、一般選抜、学校推薦型選抜と並ぶ入試方法の1つです。かつてはAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれていたものが、2021年度入試(2021年4月入学者を選抜する入試)から、名称と共に中身も変わったのがこれ。
なお、同時に以前の一般入試は一般選抜に、推薦入試は学校推薦型選抜に名称が変わっています。
AO入試のように、何となく「学力が問われない試験」だとか「推薦入試と似たような入試」といったイメージをもっている人も多いかも知れません。確かに、ベースは一般試験に問われるようなペーパー学力のみならず、その他の面まで幅広く見て、その大学持つ「求める学生像(アドミッションポリシー)」にマッチする学生を採るというのが目的なのですが、学力が要らないわけでは勿論ありません。というより、AO入試の時にこびりついた「学力を問われない入試」というイメージを払拭し、「学力も含めて色々見るものだよ」ってことで再定義されたのが、総合型選抜です。
なお、文部科学省はAO入試から総合型選抜への変更に当たって、以下の点を各大学に求める改善点として挙げています。
・調査書等の出願書類だけでなく、
(1)各大学が実施する評価方法等(例:小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績等)
もしくは
(2)「大学入学共通テスト」の少なくともいずれか1つの活用を必須化すること。
・志願者本人の記載する資料(例:活動報告書、入学希望理由書、学修計画書等)を積極的に活用すること。
つまり何らかのかたちで学力を測ることが条件になったということになります。勿論それは名目であって、実際には入学ハードルを下げている私立大学もあるわけですが、「総合型選抜(旧AO)=学力が問われない」と誤解している人は、かなり注意が必要だということです。
総合型選抜の、どこが罠なの!?
さて、では総合型選抜のどこが罠なのかという点を掘り下げていきましょう。
まず総合型選抜とは、受験生の「学力=学ぶ力」を総合的に評価・判断する選抜方式のことを言います。いわゆるペーパーテストの点数だけで評価するのではなく、知識・技能、思考力・判断力・表現力、学びへの意欲や人間性などを多面的に見ていくのが特徴なわけですが、よく考えてみて下さい。
そもそも知識、思考力、学びへの意欲や人間性が優れた人間が、それよりもはるかに劣る、単なる暗記で済むはずの単純なシステムで結果を出せていないと思いますか?総合型選抜は「いわゆるペーパーテストの点数”だけ”で評価するのではな」いだけであって、ちゃんと座学で身につけるべき知識やそこへの取り組みも視野に入れられているのです。だから、勉強が苦手な人でも大丈夫!的な救済措置では、”本来”ないはずなのです。そう、”本来”は。
でも蓋を開けてみると、2023年度の総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜での入学者数が半数を超えている。
さて、日本は現在少子化です。子どもの数は減っている。総合型選抜を積極的に活用しているのは私立大学。子どもの数が減っている中で、授業料収入を確保しなければ生き残れない私立大学で総合型選抜や指定校推薦が積極的に活用されている理由は、、、推して知るべしでしょう。パイは減る中で生徒さんの取り合いになるわけですから、純粋にアドミッションポリシーにこだわった入試を行っているのか。もし仮にペーパー学力が伸ばしきれないままで入学を許可された者は、合格すれば報われているのでしょうか?大学は通れば終わりではありません。むしろ逆に、大学は学びたい者が来るはずの場所。大学は入学してからが本番なのですが、入試をまずは乗り越えるという「瞬間風速」ばかりを気にする学生も少なくありません。今はトレンドとして大学くらい行かないと、という風潮も根強くあるため、大学進学の意向は減じていません。ここのミスマッチが奨学金の返済に苦しむ大学生を生み出す原因にもなっているようです。
勉強が多少苦手でも大学に進みたい学生サイドのニーズ。そして、少子化の中でも安定的に学生を確保し学校を存続させたい私立大学。両者の思惑が合致したのが総合型選抜という変革の必然性だったわけです(勿論、それが100%の理由ではありません。ただ、制度上必要とされるだけの理由はここにも確実にあるよね、という話です)。
ちなみにこういった、ペーパー評価だけでは測れないよねっていうトレンドが生まれた背景にあるのは、紛れもなく、学校がそもそも学生、生徒を教育しきれていないという現実なのは言うまでもありません。単なる暗記大会だと揶揄される一方で、その単純な仕組みすら教員の方々が子どもたちに教育ツールとして活かせなかったために、子どもたちの主体性や能力にすがるしかなくなったというのが、この入試制度改革の裏にある本当の理由なのではないかというのが私の仮説です。
総合型選抜の先にあるリスク
不登校児の急増問題も含め、フリースクールの需要増加、通信制の需要増加、急速に始まった教育改革にしても、完全に学校という教育制度の機能不全が原因でしょう。学校が人を育てる機関ではなり得なくなった。他で育ってもらうしかなくなった。でも学校ほど勉強面のフォローが行き渡らないリスク。そこに留年や浪人を重ねて大学進学ができない子どもたちを作らないためにも、一般選抜以外の方法で入学させる必要が出てきた。それが国家的に見た解決策の発想なのではないでしょうか。
その上、これから益々加速する生成AIの台頭。大抵のことはAIができるようになる時代に、一体人間に何が残されるのか。仮に人間に残される余地があるとしても、その”余地”はよっぽどの才能ある人たちのものであって、総合型選抜もまた、ペーパー評価以上に評価指標が多く、意外と複雑で、座学よりもよっぽど行動力や情報収集能力、それをあらゆる方法で表現する情報発信力や、プレゼン能力、分かりやすく伝えるための情報編集力などが求められるので、正に「好き」を見つけて志望校のアドミッションポリシーに合致させられるかが勝負なので、本当の意味での学力と戦略がものを言う入試制度です。ある意味ではペーパーテストで受かった方がよっぽど分かりやすいのでは?というくらい。
勿論、入試で楽をできたとしても、その先の大学での授業をちゃんと理解していけるか(処理していけるか)ということの方が問題で、結局大学での授業についていけずに留年や退学になったのでは、それこそ意味がないでしょう。
その意味で、中学入試が今過熱気味なのは、学校教育制度への不安。公教育に預けて子どもたちが危険であるという直感が、親御さん方の教育感度を刺激して、少しでも安心して過ごせる環境を求めさせているのだと思われます。
それに、中学入試を経験した人には分かるかと思いますが、”あれ”を経験したことは少なからず自信になりますし、頭の柔らかい小学生時代に多くの知識に触れ、考えさせられたことで、結果的に総合型選抜で問われるような知識・技能、思考力・判断力・表現力も養われていく。つまり、ペーパー評価から逃げようと思っている人が総合型選抜を使おうというのと、自分の特性が総合型選抜にも活かせるなという姿勢で臨むのとでは、決定的に意味が異なるわけです。そして合格するのは断然後者が多い。
とは言っても、総合型選抜も結局は戦略がものを言う入試制度なので、何をすべきかが分かって、然るべき行動が伴いさえすれば、いくらでも活路が見出せるでしょう。
意味が分かって突っ込むのと、意味が分からないまま突っ込むのとでは、その先のリスクへの対応度合いがまるで違ってきます。何も楽をして合格して下さいというものでは、”本来”ないのだけれど、そういう人たちが集まってくるなら、私立は喜んでその門戸を開いてくれる。そういうそれぞれの思惑が交錯する入試制度、それが総合型選抜、、、、、かも知れない。
今日はあえて問題意識を持って欲しくて穿った投稿をしてみました。何かを考える参考になれば幸いです。
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